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溺れた人を助けに飛び込むのはNG?水難事故では二重遭難の危険性。とっさの判断は大間違い。

自分の子供が溺れた時、あなたはどういった行動をとりますか?
すぐに自分が飛び込んだとして、本当に子どもの命を救うことができますか?

毎年夏休みシーズンになると増加してくる水難事故。
警察庁生活安全局地域課の調べでは、平成28年度には1742人もの人が水難事故に遭っており、そのうち死者・行方不明者は816人にのぼります。

水難事故の発生場所は海が全体の半数近くと最も多く、次いで河川が全体の3割ほど。このうち子供(中学生以下)の水難事故に限定すると、河川が最も多く発生しています。

ライフジャケットの着用などにより事故を未然に防ぐのも重要なのですが、溺れた人を救助しようと飛び込んだ人も一緒に溺れてしまう二重遭難の被害が増加しています。

もし自分の子供が溺れてしまった時、助けに飛び込まないでいられる訳がない。
そう考える方が多いと思いますが、とっさの判断で自ら飛び込んだ事により、救えたはずの命が救えず自らも犠牲になるというケースが実際に発生しているのが現状なのです。

ならばそんな命に関わる事態に遭遇した場合どう対処したらいいのでしょう?

二重遭難とは

救出

溺れている人を助けようとして飛び込んだ人が溺れてしまう事だけでなく、山で遭難した人を捜索している人や、火災救助に向かった人など、救助に向かった人自身が遭難などの被害にあってしまう事を二重遭難といいます。

二重遭難の例

高知市の鏡川で息子の救助に向かった父が溺死

2016年7月16日高知市の鏡川で会社員の父と息子2人の3人で川遊びをしていたところ、10歳の弟が溺れているのに気づき、14歳の兄と父が泳いで救助に向かったが父親の行方がわからなくなる。その後14歳の兄から119番があり捜索したところ川底から父の遺体が発見された。弟は兄の救助により無事だった。

茨城県大洗町磯浜町の海岸で波にさらわれた息子を助けようと飛び込んだ母親が死亡

2018年1月21日茨城県大洗町磯浜町の海岸で12歳の息子が波にさらわれ、それに気づいた50代の母親が海に飛び込んで救助に向かう。2人が溺れている様子を発見した近くにいた男性が通報。息子は自力で岸まで辿りついたが、母親は救助後搬送先の病院で死亡が確認された。

埼玉県秩父市の雁坂峠での滑落事故

2017年1月1日埼玉県秩父市の雁坂峠で登山中の30代男性が誤って滑落。救助に向かった50代男性も救助中に200m程滑落し、埼玉県警山岳救助隊により2人とも遺体となり発見された。

東京都葛飾区金町の民家で足の不自由な祖母を火災から助けようとした中3女子死亡

2017年11月17日東京都葛飾区金町の民家で火災が発生。祖母の部屋にあったストーブから出火したとみられ、長女は自力で脱出。足の不自由な祖母と、祖母の救助に向かったとみられる15歳の孫は病院に搬送されたがその後死亡が確認された。

水難事故における二重遭難の危険性

激流

溺れている人はパニック状態に陥る

突然水中で足がつかない場所に流されて戻れなくり溺れてしまったり、必死に呼吸をしようとしても何度も気管に水が入ってきたり、一度溺れてしまった人は思うように身動きがとれなくなりパニック状態に陥ります。そんなパニック状態の溺れている人を泳いで救助する事は、どんなに水泳に自信がある人でも不可能です。

ライフセーバーでも手ぶらで救助に向かう事はない

ライフガード

ライフセーバーは溺れている人を見つけると、すぐに飛び込んで泳いで救助しに行っているようなイメージの方も多いと思います。たしかに足のつくプールなどではそうかもしれませんが、足の届かない場所ではライフセーバーでも必ず浮具やサーフボードなどを使って救助に向かいます。訓練されたライフセーバーでも足の届かない所へ何も持たずに救助に向かう事は自殺行為なのです。

溺れた人を救助する際の注意点と取るべき行動

水辺の少年

慌てて無理な行動に走らない

突如人が溺れているのを発見したり、水難事故が起こった場合には誰もが慌ててしまうのが普通です。しかし、そのような精神状態のままとっさに行動してしまうと、救助される側も救助する側もかえって危険な状況に陥ってしまいます。
溺れている人を見つけたりした場合は、反射的に行動するのではなく、まず最善の方法を考える事が重要です。

救助の要請を優先する

電話する人

一刻を争う場面かもしれませんが、周りを見渡して誰もいない場合、まずは必ず救助要請の連絡を入れます。場所や地域によりますが救助を要請して現場に到着するまで平均すると約8分程。周りに他に人がいる場合はその人に救助要請の連絡を入れてもらうよう依頼しましょう。

山や川での事故の場合

消防庁119番
警察庁110番

海で沖に流されている場合

海上保安庁118番

浮具を探し確保する

浮き輪

浮輪やロープなどの救助用具がなかったとしても、身近な物で代用できる物は意外と多くあります。自ら飛び込んで救助するのは最終手段として、まずは使える道具を探すようにしょう。

浮具や救助に使える物

・ペットボトル
・ビニール袋
・発泡スチロール
・クーラーボックス
・バケツ
・靴やサンダル
・ボール
・未開封のお菓子の袋
・リュックサック
・衣類でロープを作る

溺れている人に声をかけ続ける

溺れてしまった人は必死に助けを求めようとしても思うように身動きがとれず、声を出そうとしても口や鼻から水が入って来てしまい、自力で救助を求める事はほぼ不可能な状態です。周囲を見渡す余裕もないので、誰も助けてくれないという孤独感と恐怖心に襲われて更にパニックに陥ってしまいます。そんな時に誰かの声で救助に来てくれると分かっただけでも溺れている人にとっては非常に精神的な励みになります。
溺れている人を発見した際は常に声をかけ続けてあげる事が重要です。

水に入る際は服や靴を脱ぐ

まず注意していただきたいのが、自らが水に入って救出するのは最終最後の手段で、他に救助する方法がない場合という事です。やむを得ず自ら泳いで救助する際は、上着や厚手の衣類や靴は水中では身動きの妨げになってしまうので衣類などは脱いでから入水します。
近くに浮具がある場合は必ず身につけてから救助に向かいましょう。

距離を保ち正面から近づかない

溺れている人の正面からそのまま近づいてしまうと、パニックになった救助者に捕まれて、最悪の場合一緒に溺れてしまいます。できるだけ距離を保ち、まずは浮具や捕まれる物を救助者に渡し、冷静になるのを待ちましょう。
たとえ溺れている人が子どもだった場合でも、まともに近づいて助けようとするのは、水泳がどれだけ得意な人でも困難なのです。

ヒューマンチェーンは足の届くところまで

テレビなどで見かける事があると思いますが、複数の人それぞれが手を繋いで鎖のように横並びになって救助者の近くまで向かう事をヒューマンチェーンといいます。これは足の届く比較的浅い場所では効果的なのですが、もし途中で足が届かなくなってしまった場合は非常に危険です。両手がふさがった状態で足が届かなくなってしまうと、人は息をすることすらできません。
また、ヒューマンチェーンの途中の人が手を離してしまうと、その他の人も溺れてしまう可能性が高いので注意が必要です。

溺れた時、溺れそうになった時の対処法

sos

まずはライフジャケットの着用と準備を

水難事故防止対策として、ライフジャケットを着用しておく事は非常に大切です。子どもの場合はもちろん、大人でも流れのある川や海に行く際は着用しておきましょう。これは自分の身を守るだけでなく、周りの人の命を救う道具となります。
とはいえライフジャケットを常に着用するのは現実的に難しいですよね。すぐ手に取れる場所に置いておいたり、ライフジャケットがない場合は浮輪を膨らませておいたりするのも良いでしょう。

服は脱がないように

溺れた時に衣類を着用していた場合、泳いで陸まで行こうとして服を脱ごうとするのはやめましょう。水中ではたとえ夏でも、水温が低いと体力の消耗も早くなってしまいます。衣類を着用したままの方が、少しでも体力を温存できるのです。
また、衣類や靴を身につけていると浮力が生まれ、体を浮かす為の補助にも繋がります。

浮いて待て

 

もし自分が溺れてしまった場合、必死に陸に戻ろうとしてしまいそうですが、それは間違い。服を着ている状態では特に泳ぐのが困難で、ものの数分で体力を消耗してしまいます。まずは落ち着いて呼吸ができるように顔を上にした状態で水面に浮かぶようにしましょう。無理に泳いで体力を消耗するより、浮いて救助を待っている方が、生存確率が格段に上がるのです。

まとめ

子どもが溺れている時、すぐに飛び込まずにいられるか?この答えは、実際その場に立ってみないとわからない事です。
一度周りを確認し、冷静に判断できる人もいれば、もしその場で飛び込まなかったら後で後悔してしまいそうだから、危険を承知で飛び込むという方もいる事でしょう。
しかし、とっさの判断で自ら飛び込むという行為は、救助する側とされる側、どちらにとっても非常に危険な行為というのは間違いありません。
また、人によっては、子どもが溺れているのであればすぐに大人が飛び込んで助けるのが当たり前という考えの方もいらっしゃると思います。
水中での救助がいかに困難であるかという事の理解と、水難事故に遭遇した際の救助方法に対する意識改革も必要といえるでしょう。