手汗とは多汗症の一種で、医学的には手掌多汗症(しゅしょうたかんしょう)といわれ、手の平や足の裏から異常に発汗して大量の汗が出る症状の事をいいます。
手汗がひどくて苦しんでいる人は意外と多く、日本だけでも実に493万人が自分は手汗がひどい方だと感じているといわれています。
重度の手掌多汗症だと手の平から汗が滴り落ちる事もあり、日常に支障をきたす程。
そんな手汗の悩みの根本となる、「汗をかく」という事にはいったいどういう意味があるのでしょう。
ここではまず、人が汗をかくメカニズムと、汗の種類や特徴をご紹介していきます。
人が汗をかく理由
汗をかく事で体温調節をしている
暑い夏の日や運動をして体を動かした後など、体の体温が上がると、その熱を外に逃がすために人は汗をかきます。汗をかく事は人の体の体温をコントロールするの為に欠かせない体温調節機能なのです。
しかし最近では、エアコンの復旧により、幼い頃から汗をかきにくい環境下で育った子供たちが「汗腺が少ない」、つまり汗をかきにくい体質で成長してしまっている事も問題視されています。
汗を十分かかずに、体温が上がった状態になると人の体に様々な異常をもたらします。
汗をかかないとどのような異常が起きる?
・熱中症になりやすい
汗は体の熱を体外に放出する役割があるので、汗をかかずにいると体はどんどん熱くなっていきます。汗が出ないという事は、暑い場所にいたり激しい運動を少しするだけでも熱中症になる可能性が格段にあがってしまいます。
・痩せにくい体質になる
汗をかく事で熱を排出できないとなると、体は根本的に最初から体の体温を上げないようにと、熱を作らないようになってしまいます。
脂肪などのエネルギーを燃焼する熱がないということは、代謝が低下する事に繋がり、その結果痩せにくい肥満体形になります。
エアコンの復旧は肥満児の増加の原因のひとつかもしれません。
・冷え性になる
汗をかいて水分を体の外に出す事ができないと、体に蓄積する水分の量が増加します。
その水分が原因となり、体は冷えやすくなってしまいます。
・自律神経失調症になりやすい
低体温で基礎代謝が低下していくと、自律神経失調症になりやすく、イライラ、頭痛、肩こりなどの症状も発症しやすくなります。
・風邪を引きやすい
汗をかきにくい体質による低体温、基礎代謝の低下は免疫力の低下にも繋がります。
普段風邪を引きやすいといった方は、運動不足など汗をかいていない生活習慣が続いていませんか?
汗をかいてフェロモンの分泌する
脇の下や耳の後ろなど、特定の部位から出る汗には、異性の性的興奮を促す役割も担っています。
フェロモンの分泌で異性を性的に興奮させるというのは動物が本来持っている性質で、人間もこれと同じように体から出た汗がフェロモンのような生理活性物質となるのです。
汗をかく量・汗をかく場所・汗の出方は人それぞれ
汗をかく量や汗をかきやすい場所は普段から体を良く動かす習慣のある人、肥満気味の人など人によって様々ですが、寝ている時はコップ一杯分の汗をかくというように、人は一晩寝ているだけでも100〜200mlの汗をかくといわれます。
また、多汗症で悩む人の場合、「全身から多くの汗が出る」という方が全身性多汗症が全体の1割。「頭部」・「顔面」・「脇の下」・「手の平」・「足の裏」などの局所多汗症が9割で、中には精神的な緊張で数秒ほどで全身、または決まった部位から大量に汗をかいてしてしまう人もいます。
子供は特に汗をかきやすい
子供が寝ている時、髪の毛やマクラが汗で濡れてしまうくらい大量の汗が出ているのを見かけた事はありませんか?
これは子供が小さなうちは、体の体温調節が大人ほどうまくできない事などが原因であり、多汗症などの病気といったケースはほとんどありません。
2歳頃までにしっかりと汗をかかせてあげる事で汗腺が正常に発達し、体の体温調節機能の環境が整います。
人が汗をかくメカニズム
汗には種類がある
人間の汗は大きく分けると、エクリン汗腺という汗腺から出る汗と、アポクリン汗腺という汗腺から出る汗の2種類があります。
いずれも体内から汗を出す為に存在しているのですが、その役割や特徴は大きく異なります。
エクリン汗腺の役割と特徴
エクリン汗腺は人の体全体に存在している汗腺で200〜500万個あるといわれ、体から排出されるほとんどがエクリン汗腺から出ています。エクリン汗腺から出る汗の役割は体温調節が主で、粘り気が少なくサラサラしているのが特徴。
汗の成分は90%が水分なので、臭いもほとんどありません。
手の平から多くの手汗が出る手掌多汗症も、手のシワにあるエクリン汗腺から出る汗が多量に出る事が原因です。
エクリン汗腺からでる汗自体には臭いが少ないので手が汗臭くなるといった事は稀ですが、手の脂や汚れ、細菌などが原因で手が臭くなってしまう事もあります。
エクリン汗腺から汗が出る要因は3つ
体から出る汗の大半を占めるエクリン汗腺からの汗は、いったいどういった状況にでるのでしょうか。暑い日や運動した後などに汗をかくのは当たり前ですが、中には緊張したときや、具合が悪い時にも汗は出ますよね。
エクリン汗腺から汗がでるには大きく3つの要因に分けられます。
・温熱性発汗
これはわかりやすいと思いますが、暑い日や運動した後など体が熱を持った状態になった時、体の熱をさます為の発汗です。
成人男性がおよそ100mlの汗をかいた時、体温を1℃下げると言われています。
温熱性発汗の場合、手足以外の体毛を有する全身から発汗します。
・精神性発汗
精神性発汗は「緊張汗」とも呼ばれるように、スピーチや面接など人前で話すとき、不安を感じたとき、驚いたときなど、様々な精神的な感情によって発汗する汗の事をいいます。
暑い日や運動した後に出る汗とは違い、たとえ冷房が効いた部屋の中であっても精神性発汗は起こってしまいます。
精神性発汗が起こる部位は限られていて、主におでこ、鼻、手の平、足の裏、脇の下などのエクリン汗腺から出る汗が多いのが特徴です。
手汗や脇汗が出てしまう事にコンプレックスを感じている人は、自分が手汗や脇汗をかいてしまった事に対して「誰かに見られたらどうしよう。」「臭いがしたらどうしよう。」といった精神的不安によって、更に精神性発汗を促して汗をかいてしまうという悪循環に陥ってしまう事もあります。
・味覚性発汗
よくテレビで、すごく辛いものを食べた人が瞬時に大量の汗を吹き出しているのを見かけたりしますよね。
これは味覚性発汗といって、辛いものや刺激の強い物を口にした時、脳がそれを痛みや熱さと勘違いして感覚神経を通し発汗するといわれています。
味覚性発汗は全身のエクリン汗腺から発汗し、特に鼻やおでこから汗が出る割合が高め。
アポクリン汗腺の役割と特徴
アポクリン汗腺は全身にあるわけではなく、脇の下、乳輪、耳の後ろ、下腹部、陰部といった特定の部位に存在します。
アポクリン汗腺から出る汗の役割は主に、フェロモンなどの臭いの分泌による性的アピールだといわれ、ワキガのような独特の臭いも、このアポクリン汗腺から出る汗が周りのジフテロイド菌という細菌から分解される事で作りだされているのです。
アポクリン汗腺から出る汗はタンパク質や脂肪分を含んでいるため、乳白色で粘り気がありベタベタしているのが特徴です。
また、アポクリン汗腺は思春期頃に急速に発達するのが一般的ですが、中には幼い頃からアポクリン汗腺が発達してワキガの独特の臭いがする子供もいます。
もし自分の子供がそうなのでは?と感じた時は、子供が周りの友達に指摘されて傷ついてしまう前に、何気なく話してみるのもいいかもしれません。子供は薄々自分で感じていたとしても、カラダの事となると中々周りに話す事ができず悩んでしまうものです。
子供の肌は大人よりも敏感なので、制汗剤などの使用には注意が必要です。
デオドラントスプレーだと制汗剤や殺菌成分などにより乾燥や刺激を受けやすくなってしまうため、低刺激で肌を傷めにくいデオドラントクリームが良いとされています。
ワキガなどの汗の臭いを抑えるには清潔にする事が一番
人の体が汗を作り出す場所はエクリン汗腺とアポクリン汗腺の2つの汗腺だということがわかりました。
この2つの汗腺から出る汗事態にはほとんど臭いがありません。ではなぜ汗臭さやワキガのニオイがするのでしょう?
それは上記のアポクリン汗腺の説明で少しお話ししたように、「皮膚の表面の細菌が汗に含まれる物質を分解」してしまう事が原因です。
なので、汗をかいたと思ったら、そのままにせず、しっかり汗を拭き取って清潔に保つことが重要です。
まとめ
・人が汗をかく一番の理由は体温調節をするため。もうひとつはフェロモンの分泌。
・多汗症で悩んでる人は、体の特定の場所から発汗する局所多汗症の人が9割。
・子供はせめて2歳頃までにきちんと汗をかける環境にしてあげる事が大事。
・汗の種類はエクリン汗腺から出る汗と、アポクリン汗腺から出る汗の2種類がある。
・手汗はエクリン汗腺からの精神性発汗。
・ワキガはアポクリン汗腺から出る汗が細菌に分解されて臭う。清潔に保つことで予防につながる。
・子供や敏感肌の方にはデオドラントクリームがおすすめ。
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